• 特殊車両通行許可
2025.06.12
特殊車両通行許可 第2回判定編 あなたの車両は許可が必要か?

【第2回】判定編:あなたの車両は許可が必要?

判定の基本原則

特殊車両通行許可が必要かどうかは、車両の「重量」と「寸法」で決まります。しかし、実務では「積載物込みの状態」で判定することが重要です。空車では問題なくても、積載すると許可が必要になるケースが非常に多いのです。

重量判定の実務

車両総重量の計算方法

基本式:

車両総重量 = 車両重量(自重)+ 積載物重量 + 燃料・運転者等

実務でのチェックポイント:

  • 車検証の「車両重量」は空車重量
  • 「車両総重量」は最大積載時の重量
  • 実際の積載重量が車検証の最大積載量と異なる場合は実重量で計算

軸重計算が重要な理由

車両総重量が20t以下でも、軸重超過で許可が必要になるケースがあります。

軸重制限値:

  • 単軸:10t
  • 隣接軸:軸距1.8m未満で18t、1.8m以上で20t

計算例(4軸車の場合):

前軸重量 + 後軸重量(3軸分)= 車両総重量

各軸の重量配分を確認

業種別判定チェックリスト

🚛 運送業

大型トレーラー(セミトレーラー) □ 全長:17m以下か?(トラクタ+セミトレーラー) □ 車両総重量:36t以下か?(連結状態) □ 軸重:各軸10t以下か?

よくある超過パターン:

  • 建設機械輸送時の重量超過
  • 長尺物輸送時の長さ超過
  • 背高物輸送時の高さ超過

チェック表:

輸送物

要注意項目

許可必要率

建設機械

重量・長さ

80%

鋼材

長さ・重量

70%

プレハブ

幅・高さ

60%

🏗️ 建設業

自走式クレーン □ 幅:2.5m以下か?(アウトリガー格納時) □ 高さ:3.8m以下か?(ブーム格納時) □ 軸重:各軸の重量配分は適正か?

大型ダンプ(10t超) □ 積載時の車両総重量:20t以下か? □ 後軸重量:隣接軸重制限内か?

実例計算:

25tクレーン車の場合

– 車両重量:22t

– 燃料等:1t

– 合計:23t → 許可必要(20t超過)

♻️ 産廃業

大型産廃収集車 □ パッカー車の圧縮後重量は適正か? □ コンテナ車の積載時寸法は制限内か? □ 特殊形状廃棄物による寸法超過はないか?

注意すべき廃棄物:

  • 建設廃材(長さ超過)
  • 金属スクラップ(重量超過)
  • 大型機械(幅・高さ超過)

寸法判定の実務

測定時の注意点

幅の測定:

  • ミラー、方向指示器も含む
  • アウトリガー等の突出部分
  • 積載物の最大幅

長さの測定:

  • バンパーから最後端まで
  • 積載物の前後突出を含む
  • 連結車両は全体長

高さの測定:

  • 平坦な場所で測定
  • アンテナ、積載物を含む最高部
  • エアサス車両は標準車高で測定

よくある測定ミス

  1. ミラーの幅を忘れる → 実測すると2.5m超過のケース多数
  2. 積載物の突出を軽視 → 長さ・高さで違反になりがち
  3. エアサスの車高変化 → 積載時に高さが変わる場合あり

判定フローチャート

車両の確認

寸法測定(幅・長さ・高さ)

重量計算(車両重量+積載物)

軸重配分の確認

1つでも制限値超過?

YES → 特殊車両通行許可が必要

NO → 一般車両として通行可能

実務判定ツール

簡易判定表

車種

許可必要の可能性

主な超過項目

10t超ダンプ

高い

重量・軸重

25t以上クレーン

ほぼ確実

重量・軸重

大型トレーラー

積載物次第

長さ・重量

パッカー車(10㎥超)

中程度

重量

月次チェックリスト

運行管理者向け定期確認項目: □ 新規導入車両の寸法・重量確認 □ 積載パターン別の重量計算 □ 許可証の有効期限確認 □ 乗務員への制度周知状況

トラブル事例と対策

事例1:測定ミスによる違反

状況: 自走式クレーンの幅を2.5mと思い込み 実際: アウトリガー部分で2.7m 対策: 専門業者による正確な測定実施

事例2:積載物重量の見積もり甘さ

状況: 建設機械輸送で重量を過少申告 実際: 実測で3t超過 対策: 製造業者仕様書による正確な重量確認

事例3:軸重配分の計算間違い

状況: 総重量は制限内だが後軸重量超過 実際: 隣接軸重20t超過で違反 対策: 軸重計による実測とバランス調整

まとめ:判定で失敗しないための5原則

  1. 実測主義:推測ではなく必ず実測する
  2. 最大積載で判定:実際の使用状況で確認
  3. 軸重も忘れずに:総重量だけでなく軸重配分も確認
  4. 定期的な見直し:積載パターン変更時は再判定
  5. 専門家の活用:判断に迷ったら運輸支局等に相談

次回は「制度選択編」として、通行許可と通行確認のどちらを選ぶべきか、具体的な判断基準をお伝えします。